喘息についてご説明します。
喘息とは
喘息とは、発作的にゼイゼイやヒューヒュー(喘鳴)・息が苦しい(呼吸困難)・咳がひどい、などの症状が繰り返しみられる病気ですが、それらの症状は自然経過で治癒することもありますが、急性期には治療が必要です。
喘息は空気の通り道である気管支の病気ですが、喘息発作を起こしているときの気管支には「気管支平滑筋の収縮」「粘膜の浮腫」「分泌物の増加」などの変化が起こっていると考えられています。
気管支の収縮 | 気管支を取り囲む平滑筋収縮による気道の狭窄。 |
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気管支粘膜の浮腫 | 気管支粘膜の浮腫(むくむこと)。 |
分泌物の増加 | 痰の増加 |
以上は正常でも同様の変化を生じることがあります。つまり気象の変化、呼吸器感染、異物の吸入などで生体の防御反応として観察されることがあります。しかし喘息の患者さんはこれらの反応がわずかな刺激でも激しく起こるという特徴があります。この状態を「気道過敏性の亢進」と呼び、これが喘息の本体です。しかし、こうした反応は発作性に起こるため、喘息は「発作性の疾患」と長い間定義されていました。
遷延する気管支の炎症
しかし、いろいろと研究や調査がすすむにつれて、喘息は普段の安定した状態でも気管支に炎症が存在しているということが明らかになってきました。持続する炎症が「過敏性の亢進」を引き起こしている原因であり、従来の発作性の疾患という概念から「気管支の慢性の病気」へと見方が大きく変わってきています。
喘息の治療もその観点から変わってきました。以前は発作時の対応や発作の誘因を取り除く事が中心でしたが、今日ではそれだけでは十分ではなく、気管支の慢性炎症に対する治療が重視されるようになってきました。つまり、発作の有無に関わらず日常的に治療を行うことにより気管支の慢性炎症を抑えることが可能となり、喘息患者の方々も健常な方と変わらない毎日が過ごせます。
小児の喘息
小児も喘息は体の成長に伴い、喘息は治ってしまうことがあります。しかし、約1割程度のお子さんは喘息を成人の年齢まで持ち越してしまいます。また、呼吸器感染などにより喘息が再発することもあります。成人まで持ち越す人と、治癒する人との差はどこに起因するかは、小児期の喘息発作の回数や重症度が影響しているのではないかと考えられています。その回数が多く発作が重たいと気道過敏症が高まり、喘息を起こしやすい状態(過敏症を残したまま)で成長してしまったと考えられています。
つまり小児の喘息でも発作をできるだけ軽く、繰り返さない方が、将来の質の高い治療につながると考えられています。そのため、日常の十分な喘息管理が大切とされるようになっています。
そもそもアレルギーとは?
全ての生物には外敵から身を守る働き、それが免疫です。
つまり体外から進入したものを異物として反応し、排除しようとする反応です。
そして生物は絶えず異物の進入にさらされており、接触するたびに免疫が働きます。
しかし時として異物に対する反応が必要以上に起きてしまう場合があり、体にとっては不適当な反応になってしまいます。
これをアレルギーといいます。
例としてあげるとダニやハウスダストに対して喘息が起きたり、卵白などの食物に対してアトピー性皮膚炎が起きたり、スギの花粉に対してアレルギー性鼻炎が生じることなどはよく知られています。
このような刺激物(アレルゲン)から喘息などのアレルギー症状が起こるのです。
アレルギーによる気道への影響
アレルギーの反応には、免疫グロブリン(免疫をつかさどるタンパク質)の1つであるIgEが主役をなしています。
アレルゲンが体内に入ると、そのアレルゲンに対して反応するIgE(特異IgE)が結合し、それに連動し、免疫に関する細胞である肥満細胞から次の免疫反応を起こさせるヒスタミンを代表とする化学物質が大量に放出されます。
これらの物質が気道を刺激し喘息症状を引き起こすことになります。
アレルギー以外に気道に反応を起こさせるもの
喘息の原因として、アレルギー以外に気象の変化、運動、タバコなどの煙、大気汚染、ストレス、感染症など多数あります。
喘息の発症にはさまざまな原因が複雑に絡み合って発症していると考えられており、単純にアレルギーの除去や回避だけでは喘息が完治しない場合もあります。
根気よく原因を究明していく必要があります。
喘息に類似した疾患
喘息の症状の特徴に喘鳴、呼吸困難がありますが同様の症状を来す疾患は多数あります。たとえば主にウイルスが原因で起きる喉頭に異常を生じるクループ、異物による気道閉塞、百日咳などは比較的日常でよくお目にかかる疾患です。ゼイゼイと喘鳴などがみられても喘息と勝手に判断されず、できるだけ早急に医師の診察を受けましょう。その他にも喘息に類似した症状を来す疾患をお示ししました。
先天性、発達の異常にもとづく喘鳴
先天性心疾患、大血管の奇形、気道の狭窄などの解剖学的な異常、咽頭・気管・気管支軟化症、繊毛運動機能異常
感染にもとづく喘鳴
クループ、気管支炎、細気管支炎、肺炎、気管支拡張症肺、結核
その他
気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺(臓)炎、サルコイドーシス、気管支内異物、肺梗塞、気胸、心因性咳嗽、過換気症候群、気管・気管支の圧迫(腫瘍)、肺浮腫