成長障害、低身長についてご説明します。
「身長が低い」ということは
子供の成長には個人差はありますが、ある程度一定の法則があります。緩やかに身長が伸びる時期と急速に伸びる時期などは、大部分のお子さんが、同様の曲線を描きます。
同じ年齢のほかのお子さんと比べて身長が低いからといって、異常とは限りませんが、その法則からはずれている場合には、できるだけ早い時期に受診していただいたほうがよろしいでしょう。
ただし、身長を伸ばすことが全てではありませんし、成長障害だとしても治療が必ずしも必要というわけではありません。肉体的にも精神的にも健やかな生活を送れるようにすることが、お子さん本人やご両親とともに医師が目指す目的なのです。
成長ホルモン分泌不全性低身長症 いわゆる下垂体性小人症
成長障害には、さまざまな原因があります。その原因の一つに、成長ホルモン分泌不全性低身長症があります。日本では、約15000人に1人の割合で、この病気があるといわれています。
子供の成長に関わる要因
代表的なものはご両親の体質、つまり遺伝性、その他にはホルモン、栄養状態、睡眠の状態、運動量、出生児のエピソード、その後の発育状態、十分な周囲からの愛情など、これらすべてが、お子さんが成長する上で必要な要因です。
成長に関わるホルモン
成長に関わる要因の中でも重要な要因はホルモンです。
特に1歳から思春期では成長ホルモン(GH)
思春期以降から骨が大人になって成長が止まるまでの成長の最終段階には性ホルモンが、それぞれ深く関与しています。
そのほか、甲状腺ホルモン(T3、T4)もお子さんの成長には欠かせない大切なホルモンです。
成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断
成長曲線でチェック
お子さんの身長、体重を記録し、成長パターンに次のような徴候がみられたら、成長に何らかの問題がある可能性があります。
- 身長の伸びが、1年につき4cm以下。
- 伸びが緩やかになり、成長グラフの身長曲線(成長曲線)が通常の成長パターンからはずれる。
- 身長が成長曲線の一番下の曲線を下回る(-2SD以下)。
これらの徴候がみられる時は、なるべく早く受診してください。なお、成長曲線をご希望の方はご来院ください。
お子様を診察させていただきます。
1. 検査前の診察
お子さんの成長曲線をつくり、成長記録を見ます。次にご出生後から現在までのお子さんの食事、家庭環境、睡眠の状況、友人関係、その他の環境の状況などの病歴をお伺いします。
2. 病的な要素があるかどうかの検査
- X線検査によって骨の発育程度(骨年齢)を検査
- 血液検査(成長にかかわるホルモンの分泌量、血糖値、たんぱく、脂質などの検査)
- 尿検査
血液検査と尿検査は他の内臓の異常がないかを確認します。
以上の一般検査によってほかの疾患がなく、成長ホルモンの分泌が低下している可能性が考えられる場合はさらに精密検査を行います。
精密検査を行う
- 成長ホルモン負荷試験
- 下垂体の形や脳腫瘍の有無などを調べるため頭部の画像診断(MRIやCT)を行う場合があります。
- 女の子の場合はターナー症候群の診断のため染色体検査を行う場合があります。
成長ホルモン負荷試験
成長ホルモンの分泌状態をより正確に調べるための検査です。
成長ホルモンは1日中分泌されていますが、その量は一定ではなく、時間によって血液中の分泌量にかなりのばらつきがあります。
日中は分泌量が少なく、正常でも低値を示します。そのため、1回の検査では信頼性が低いので、成長ホルモンの分泌を促す薬剤を投与して、一定の時間ごと(30分ごと)に血液中の成長ホルモンの量を測定します。
下垂体に十分に成長ホルモンがあれば、刺激薬によって大量に分泌されますが、十分にない場合には刺激薬を投与しても、あまり分泌されないことになります。
成長ホルモンの分泌を刺激する薬剤として、5つの薬剤(インスリン、アルギニン、L-DOPA、グルカゴン、クロニジン)が用いられます。
負荷試験の検査結果からわかること
治療の適応があるかどうかの基準は現在では下記のように分類されます。
- 適応外(4.3ng/mL以上)
- 適応(4.3ng/mL未満)
- 2つ以上の試験のうち、1つだけが異常である。
2つ以上の検査で、結果が3番は治療の対象となり治療を始めます。
3番の場合は、医師は経過を観察するか、残りの負荷試験を追加して行います。