風疹についてご説明します。
以下の文章は国立感染症研究所より抜粋(http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g2/k01_29/k01_29.html)
風疹
風疹(rubella)は、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症である。近年国内においてもその発生は減少傾向にあるが、まれに見られる先天性風疹症候群予防のために、妊娠可能年齢およびそれ以前の女性に対するワクチン対策が重要な疾患である。
疫学
我が国では風疹の流行は2〜3年の周期を有し、しかも10年ごとに大流行がみられていた。最近では、1976、1982、1987、1992年に大きい流行がみられているが、次第にその発生数は少なくなりつつあり、流行の規模も縮小しつつある。季節的には春から初夏にかけてもっとも多く発生するが、冬にも少なからず発生があり、次第に季節性が薄れてきている。
臨床症状
感染から14〜21日(平均16〜18日)の潜伏期間の後、発熱、発疹、リンパ節腫脹(ことに耳介後部、後頭部、頚部)が出現するが、発熱は風疹患者の約半数にみられる程度である。3徴候のいずれかを欠くものについての臨床診断は困難である。溶血性レンサ球菌による発疹、典型的ではない場合の伝染性紅斑などとの鑑別が必要になり、確定診断のために検査室診断を要することが少なくない。
多くの場合、発疹は紅く、小さく、皮膚面よりやや隆起して全身にさらに数日間を要することがある。通常色素沈着や落屑はみられないが、発疹が強度の場合にはこれらを伴うこともある。リンパ節は発疹の出現する数日前より腫れはじめ、3〜6週間位持続する。カタル症状を伴うが、これも麻疹に比して軽症である。ウイルスの排泄期間は発疹出現の前後約1週間とされているが、解熱すると排泄されるウイルス量は激減し、急速に感染力は消失する。
主な合併症
基本的には予後良好な疾患であり、血小板減少性紫斑病(1/3,000〜5,000人)、急性脳炎(1/4,000〜6,000人)などの合併症をみることもあるが、これらの予後もほとんど良好である。成人では、手指のこわばりや痛みを訴えることも多く、関節炎を伴うこともある(5〜30%)が、そのほとんどは一過性である。
風疹に伴う最大の問題は、妊娠前半期の妊婦の初感染により、風疹ウイルス感染が胎児におよび、先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)が高率に出現することにある。これは妊娠中の感染時期により重症度、症状の発現時期が様々である。先天異常として発生するものとしては、先天性心疾患、難聴、白内障、網膜症などが挙げられる。先天異常以外に新生児期に出現する症状としては、低出生体重、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、間質性肺炎、髄膜脳炎などが挙げられる。また、幼児期以後に発症するものとしては、進行性風疹全脳炎、糖尿病などがある。
予防接種
弱毒生ワクチンが実用化され、広く使われている。MMR(麻疹・おたふくかぜ・風疹)混合ワクチンとして使用している国も増加している。我が国では平成6年以前は中学生の女子のみが風疹ワクチン接種の対象であったが、平成6年の予防接種法改正以来、その対象は生後12カ月以上〜90カ月未満の男女(標準は生後12カ月以上〜36カ月以下)とされた。また経過措置として、平成15年9月までの間は、12歳以上〜16歳未満の男女についてもワクチン接種の対象とされた。現時点での予防接種率をみると、風疹の予防接種を受ける幼児の数は増加したが、逆に中学生での接種率は減少し、対策の強化が課題となっている。平成8年度の伝染病流行予測事業による調査では、我が国における風疹抗体保有状況をみると、小学校高学年から中学生年齢の女子の抗体陽性率は低く、12歳女子における風疹抗体陽性率は52%にすぎない。風疹の流行の規模は縮小しつつあるが、発生が消えたわけではない。風疹に対する免疫を有しない女性が妊娠した場合に風疹の初感染を受ければ、先天性風疹症候群発生の危険性が高いことは明らかであり、現時点では幼児期のみならず中学生に対しても風疹ワクチン接種を積極的にすすめる必要がある。