アトピー性皮膚炎についてご説明します。
アトピー性皮膚炎の原因と症状
原因
アトピー性皮膚炎の主な原因には下記の3つがあります。
- アレルギー(アトピー体質)
- 肌の性質(遺伝)
- 悪化因子(気候、発汗、精神的ストレス、体調、過労、紫外線など)
症状
以上の原因からアトピー性皮膚炎の主症状である皮膚の炎症、かゆみ、肌の乾燥が生じます。この中でもかゆみはアトピー性皮膚炎の患者さんにとって最も苦しめられる症状です。
アトピー性皮膚炎の治療
治療の基本的な考え方
治療の基本的な考え方は重症度に合わせて以下のことを主な柱とします。
- 原因・悪化因子の探索と除去
- 炎症を予防するスキンケア
- 炎症を抑える薬物療法
原因・悪化因子について
乳児期〜1歳 | 食物(特に卵)、環境因子、発汗、細菌・真菌など |
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2歳〜12歳 | 幼少期には食物が原因となることが多いのですが、年長になるに従い徐々にダニ、ハウスダスト、カビなどの環境因子がアレルゲンとなることが多くなってきます。 |
13歳〜成人 | 接触抗原(化粧品、装身具、ゴム、布など)、ストレスなどの心因的な要因が徐々に増加します。 |
炎症を予防するスキンケア
皮膚の清潔(毎日の入浴・シャワーが大切です)
- 汗、汚れは速やかに落とすが強くこすらない。
- 石けん、シャンプーは洗浄力の強いものは避け、十分にすすぐ。
- かゆみを生じるような高温のお湯は避ける。
- 入浴後にほてりを感じさせる入浴剤は避ける。
- 入浴後、必要に応じ適切な塗り薬を使用する。
皮膚の保湿(保湿剤を有効活用しましょう)
- 保湿剤は皮膚の乾燥防止に効果的。
- 入浴・シャワー後に必要に応じて保湿剤を使用する。
- 患者さんごとに皮膚にあった保湿剤を選択する。
- 軽い皮膚炎は保湿剤のみで改善することがある。
その他
- 室内の清潔、適温、適湿を保つ。
- 新しい下着は使用する前に1回水洗いしておく。
- 洗剤は界面活性剤の含有量の少ないものを使用する。
- 爪を短くしておく。
スキンケアのための保湿剤
保湿剤は乾燥を防ぐための塗り薬なので、こまめに塗ることが大切。
軽い症状なら保湿剤だけで改善が期待できる。
炎症を抑える薬物療法
治療の目標
医師のアトピー性皮膚炎の治療目標はおおよそ以下のものです。
完治を目指すのではなく、日常生活に支障なく普通に生活できるようにすること。ただし、「普通の生活」は各人によってもまた状況によっても変化するので、同一のものではない。
塗り薬(ステロイド軟膏)
副作用に対する不安
さまざまな情報が氾濫しており、不安が常につきまといます。しかしこの不安こそアトピー性皮膚炎を増悪させる因子ですので不安の解消が大切な治療の第一歩です。
ステロイド軟膏の副作用
ステロイド剤の効果と副作用は長年の考察から十分に知られている薬物です。それ故に使用方法を誤らなければ、安全に使用できるものです。
厚生労働省科学研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」によると、安全とされる使用量は以下の表のようになります。
日常診療におけるステロイド軟膏使用量調査
6か月間の90%使用量(1本5gリンデロンのチューブとして)
2歳未満 | 2歳以上13歳未満 | 13歳以上 | |
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患者数 | 210例 | 546例 | 515例 |
顔面 | 2本程度 | 3本程度 | 7本程度 |
体全体 | 18本程度 | 26本程度 | 61本程度 |
局所性副作用
多毛、皮膚の発赤、毛細血管の拡張、皮膚の萎縮、ニキビの悪化、かぶれ、皮膚感染(とびひ、みずむし、ヘルペス、みずいぼなど)の悪化などがあります。
なお、ステロイド軟膏で肌が黒くなるというのは、むしろアトピー性皮膚炎の改善の過程での色素沈着と考えられています。
塗り薬 タクロリムス軟膏(市販名:プロトピック軟膏)
免疫抑制剤なのでステロイド軟膏のようなホルモン作用による副作用はありません。欠点は最初にひりひりした感じがあることですが、数日で消去し、ほとんどの人は適応できます。吸収率の高い顔面の病変部位には効果が高く、ステロイド軟膏では良くならなかった患者さんがタクロリムス軟膏使用後に減少しました。
またステロイド軟膏との併用によりステロイド軟膏の使用量は明らかに減少させることができるようになりました。 副作用は免疫抑制剤のため皮膚感染症の増加が心配されましたが、今のところ使用前後における皮膚感染症の発生率には差がみられません。
のみ薬(かゆみを抑えることが目的)
抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤
大きな副作用はありませんが、種類によっては眠気がくることがあります。また最近の抗アレルギー薬には眠気は少なく、1日1回の内服で済むものもあります。